宮崎県にあるおそらくは日本唯一の樽専門製造工場(クーパレッジ)に行ってきました。
エントランスはとてもスッキリしていて来客用の駐車スペースもありましたよ。
敷地内には出来上がった新樽やこれから再生される使用済みの樽などが積まれていて横を通る道路から一目で何の工場か分かります。
工場長の永友さんが丁寧に案内して下さって本当に有り難かったです。
これは使用済みの樽の内部を焦がしている工程(リチャー)で火花が上がる様は迫力ありました。これは樽の木香が過剰に出すぎるのを防ぐのと、樽の成分を溶出しやすくするためのものです。
今回は運良くこの工程を目の前で見れました。今は冬ですが夏場は大変な作業になる様です。
チャー後の樽の内面です。炭化された部分の表面は削り取られます。
樽の胴回りを形成する側板です。これに彎曲が加えられてピッタリと漏れのない樽が組み立てられるのはやっぱり精密な計算と熟練の技でしょうか。この時点で樽の外側になる面は内側より長く形成され板の真ん中は両端より太くなっていました。
樽の蓋の部分(鏡、circle heading)とそれを形成する機械です。機械化するところは機械化し人間の感覚が必要なところは人の手で行われていて両者がいいバランスで活かされていると感じました。
これがガマ(別名 ミズクサ))で樽材と樽材の間の漏れやすい部分に詰められるそうです。
最終の仕上げです。流石に新樽は美しかったです。
こちらはピート樽(アイラモルト熟成後の樽)です。この樽は再生して出荷するそうですが意外と焼酎メーカーからの需要が多いそうです。中身はもちろん入ってないですがダボ栓を抜いて中身を匂わせて頂きましたがアイラモルトがまだ入っている様なピーティな樽香でした。
これはシェリー樽。といってもこれは単にシェリー酒をシーズニングさせた樽ではなく本物のソレラシステムに使われていたアメリカンホワイトオークのシェリー樽です。おそらくなかなか出てこない貴重な樽です。これで熟成させたモルトウイスキーが飲みたいです。
PS:有明産業では現在450リットルと250リットルのサイズの樽を中心に造っていて使用される木材はミズナラ、クリ、桜、杉が多くウイスキー愛好家にとってはやはりミズナラが気になるところです。でもこのミズナラが一番内容物の漏れなく造るのが難しく最終的な検査でふるい落とされる樽も多いそうです。
シーバスリーガルのミズナラもここのミズナラ樽が使われていますし、台湾のカバラン にもミズナラ樽を出荷しているそうです。きっと数年後にはカバラン のミズナラ熟成のウイスキーが飲めるのでしょう。そして大手だけでなく続々と出来るクラフト蒸溜所に樽を出荷しているそうで、今後この有明産業の樽で熟成されたウイスキーを飲む機会が増えそうです。
今回、樽造りの工程も興味深かったですが、真剣さと誠意が溢れた場と時間の中に居れたことも心地よかったです。